人間の科学をもってしても、未だ地震の完全予知は不可能だといわれている__。
そんな中、動物の”地震予知能力”が注目を集めているのだ。
あらゆる動物たちが、地震発生前にはそれを察知したかのように異常行動をみせるという。
動物には、人間には無い”地震を事前に察知する”不思議な能力が備わっているのだろうか。
地震発生前の動物の異常行動は地震の前兆?
地震が発生する前に、動物の異常行動がみられたケースはこれまでに多数報告されているが、まずは有名なエピソードの一部を紹介する。
・1855年の安政江戸地震や1923年の関東大震災では、地震発生の数日前にネズミの大群が街から逃げていた
・関東大震災や阪神大震災、東日本大震災の前には3ヶ月ほど前から動物の異常行動が増えていき、前日〜直前にはピークに達した
・2011年にペルーでM7の地震が起こる3週間前には、アンデスの国立公園から様々な動物が逃げ出した
・2011年にニュージーランドで発生したカンタベリー地震では、発生の2日前にスチュアート島にゴンドウクジラが100頭以上座礁している
・2011年東日本大震災の1週間前には50頭ものイルカが茨城県の海岸に打ち上げられた
・陸前高田市では東日本大震災の数日前からカラスの姿が消えた
・2016年熊本地震の8日前には長崎市の海岸にザトウクジラが打ち上げられていた
・ミミズが大量発生
・イワシが海から川へ逆上
地震発生前の動物の異常行動について詳しく紹介していこう。
ナマズの地震予知
まず、地震を予知する生き物として最も印象が強いのは、”ナマズ”ではないだろうか。
古くから、「ナマズが暴れると地震が起きる」という言い伝えがあったようだ。
1855年の安政江戸地震では、地震発生の4時間ほど前にはナマズが川で暴れていたという記録がある。
地震の発生前に川でウナギを獲ろうとしていた漁師は、川で暴れるナマズを見て地震を疑い、家に帰って家財を外に持ち出して避難した。
その後、巨大地震が起きて家は損壊したが、家財や身は無事に済んだというのだ。
この頃から、「ナマズは地震を予知できる」というイメージは急速に広まったといわれる。
さらに関東大震災の前には、向島にある料亭の水槽にいたナマズの幼魚が、地震の3日ほど前から頻繁に跳ねていたという。
そして1930年には、東北大学の畑井新喜司教授によって興味深い調査結果が報告されている。
ナマズは地震の前に発生する地電流に反応すると考えた教授は、飼っていたナマズの水槽を地面から絶縁したところ、地震の前でも反応する事がなくなったというのだ。
ナマズは電流に対してとても敏感で、地震の際には地殻から発する電磁波や電流に反応するのだという。
通常時とは違う電流を感じる事で、異変を察知して暴れるということだ。
カラスの地震予知
先述したように、地震の数日前にカラスが街から姿を消すといった例は多いが、それだけではない。
東日本大震災の3日前には、カラスが取り乱したように騒ぎ、家の窓にぶつかってきたという経験をした人もいる。
カラスは動物の中でもトップクラスの知能を持っているといわれる為、危険を察知する能力も高いのだろうか。
ウサギの地震予知
ウサギを飼っていた人の中には地震発生前に、通常とは違ったウサギの顕著な異常行動を目にした人も多くいる。
・東日本大震災の6時間ほど前に、学校で飼育するウサギが穴を掘っていた
・熊本地震が発生する6時間前、飼っていたウサギがパニックを起こして暴れまわり、地震発生の直前には激しいスタンピング(足で地面を踏み鳴らす)があった
ウサギは非常に聴力が優れている為、すぐに地中の異変を察知できるのかもしれない。
犬や猫の地震予知
阪神大震災の前には、震源地付近で飼われている犬や猫のうち、約20〜30%に異常行動がみられたという。
中でも、主に以下のような行動が確認されている。
・通常時よりよく吠える
・悲しそうに鳴いたり、鳴き方がいつもと違う
・ソワソワしたり怯える
・地面を頻繁に嗅いだり穴を掘る
・家の外に出たがるもしくは出たがらない
・食欲不振や体調不良
世界では、地震の直前に犬によって外に導かれた事で助かった例が多数報告されている。
ある例では、飼い犬が激しく吠えたり悲しそうに鳴いたりし、飼い主の服を引っ張って外に出そうとしたそうだ。
ドアを開けて外に出た直後に、巨大地震が襲ってきたという。
日本でも、1855年安政江戸地震の際には同じケースが記録されている。
ただ吠えるだけでなく”悲しそうに鳴く”という点も共通しており、単なる偶然とは考えにくい。
嗅覚も聴覚も優れているからこそ、人間には感じ取ることができない異変を感じるのだろうか。
これらの動物の他、地震発生前の牛や鶏などに関するデータにも興味深いものがある。
乳牛の搾乳量や鶏の産卵率と地震発生の関連性を調べた実験では、地震との関連性を裏付ける明らかに顕著な結果が出ているのだ。
2014年に行われた調査では、地震の3週間前から乳牛の出乳量が極端に減っていたそうだ。
地震の3〜6日前にかけては、震源地付近の牧場では顕著な乳量の減少がみられ、発生する地震の規模が大きくなるにつれ出乳量はさらに減少していた。
また、この結果は鶏の産卵率にもほぼ共通していた。
これらの原因は科学的には解明されていないが、牛や鶏が地震発生前の兆候や現象についてストレスを感じた結果である可能性が高いといわれている。
なぜ動物たちに地震発生前の異常行動がみられるのか
地震発生前にみられる動物たちの異変は『宏観異常現象』と呼ばれており、地震発生の前日から直前にかけてピークに達するそうだ。
地震が発生する際には、プレートの摩擦によって地殻の鉱物が化学反応を起こし、大気中に電磁波が放出されるといわれている。
動物たちは地下から発せられる微弱な匂いや音、電磁気を帯びた大気や高周波の振動、地磁気の変化などから異変を察知すると考えられている。
鯨やイルカの座礁などにも、地磁気の変化や電流による方向感覚の乱れが関係する事があるという。
異変の察知や異常行動には個体差があり、室内で人の手が多くかけられて飼育されている動物よりも、野生に近い動物の方が本能的に鋭いそうだ。
現在も、様々な動物の行動と地震発生の関連性は研究され続けている。
動物による地震発生前の異常行動が、本格的な地震予知に繋がる日は近いのかもしれない。